人は奪われたものを取り返そうとしてまた失う(ノーカントリー感想)
友人と「ノーカントリー(No country for old men)」という映画を見てきた。ホラーものが見たい気分だったのだが、公開中のホラー映画がなかったため、R15サスペンスを見ることにした。サスペンスを劇場で見るのは初めてだったのだが、大画面と音響のおかげで緊張感を楽しむことができたのでよかったと思う。
舞台は1980年代のアメリカ。狩猟をしていた男(ルウェリン)が大金の入った鞄と麻薬を発見し、(よせばいいのに)その鞄を持ち去ったことによって殺人鬼シュガー(シガー)に追われることになるというこの映画、「恐るべし銃社会」というのがまず第一の感想。こんなに人が死ぬ映画は記憶している限り、「ヒトラー最後の12日間」以来だ。あの映画の、男性が突然口にピストルをあてて自殺するシーンは私のトラウマだ。
それはいいとして。ノーカントリーはなかなか後味の悪い映画だったと思う。自分も殺人鬼に殺されるのではないかと思った。このあまりにも冷酷な殺し屋を演じたハビエル・バルデムの姿が脳裏から離れない。あのおかっぱ頭も妙なインパクトを醸し出していた。
ここから下はネタバレを含むので反転してください。(少し見えてしまっていますが…)
あらかじめ言っておくと、これと言って結末らしい結末はなかった。
まず、開始3分で一人死亡。その後もその殺人鬼によって人間が次々と殺されていく。合計15人は殺されたのではないだろうか。
この殺人鬼がホントに容赦ない。何をしたわけでもないのに、相手が泣こうが喚こうが、命乞いをしようが即刻銃殺する。薬局で店の前に駐車してある車を爆破したシーンがあったが、「なにもそこまですることないだろ」の連続だった。
この殺人鬼の正体は結局最後まで明かされない。彼の過去や、連続殺人の動機などはすべて謎のまま終了してしまう。麻薬が絡んでいるのは分かるが、どうもそれだけではない。本当に誰彼構わず殺してしまうのだ。このような映画って、殺人鬼が結局は自殺するのがセオリーだと思っていた。しかしハッキリ言うと、彼は死にません。逮捕もされません。骨折はしますが。それで終わり。これが後味が悪いと感じる理由なのだ。
ついでにもう一つハッキリ言うと、ルウェリン死にます。殺される瞬間も描かれていません。普通殺さないだろ。正直言って驚いた。だって主人公(本当の意味での主人公はトミー・リー・ジョーンズ演じる保安官ベルだろうけど)だもの。
それともう一つ…シュガーを捕らえるために送られた刺客がいともあっけなく死んでしまったのが何とも言えなかった。てっきりこの人とルウェリンでシュガーを倒すのだと思った。シュガーと刺客が一対一で話すシーンで、それまで会話をしていたのに、カメラがシュガーのほうに切り替わった瞬間、彼は銃を握っていた。ドキッとした。で、その後、こっちがホッとした拍子にバン!
最後に少年二人が金の取り合いをするのもこれからの社会への不安を表しているんだろうなぁ…
結局は、ルウェリンと殺人鬼との追いかけっこを楽しむ映画ではなく、保安官ベルの思いやものの見方をフィルターとして社会やそれを構成する人間について考える映画なのだと思う。タイトルにもあるように、年老いた保安官は無力を感じたんだろうなぁ…
「人は奪われたものを取り返そうとしてまた失う」という言葉が印象深かった。よく言われることだけれど、改めて聞くと確かにその通りだなと。
しかしこの映画、テレビで見たら微妙だろうなぁ。音で驚くところも多々あったので。
あ、そうそう、これからこの映画見る方は、最後のところの保安官が見た夢の話をちゃんと聞いてくださいね。
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投稿: みんな の プロフィール | 2008年4月 6日 (日) 14時38分